遺産分割の手順(その9)
2025/07/08
遺産分割の手順(その9)
前回は遺言書等によって法定相続分より少ない遺産分割となる場合の遺留分や、遺留分を侵害された際の請求等について紹介しました。
これ以外にも、①「自分はずっと親と一緒に生活し、介護を含めて面倒を見てきたのに、若い時から実家を離れて好きに暮らしてきた他の兄弟と相続分が一緒なのは納得いかない。」とか、②「兄は大学進学の費用も、自宅を建設する際の費用も親に出してもらっているのに、全て自力で頑張ってきた自分と差がないのは納得いかない。」といった、それぞれ個別の事情によって争いが生じる場合があり、そうした内容の相談を受けることもあります。
①のケースが“寄与分”の問題、②のケースが“特別受益”の問題になります。
具体的な法律相談等については行政書士業務の範囲外となるため、実際には弁護士等への相談をお勧めしていますが、ここでは一般論としての寄与分について簡単に説明します。
“寄与分”とは、相続人の中に、被相続人の遺産の維持や増加に「特別の貢献をした人(寄与者)」がいる場合に、相続財産からその「特別の貢献」にあたる金額を控除し、残った金額を相続財産とみなして各相続人の相続分を計算したうえで、控除分を寄与者に追加して取得させることによって相続人間の公平を図ろうとする制度です。
寄与分に関する相談は意外と多く、そのほとんどが親の介護と関連するものですが、子が親の面倒を見ることは扶養義務の観点から当然のことに当たるため、調停や審判においても寄与分が認められるためのハードルは高いと言わざるを得ないようです。
寄与分が認められるためにはいくつかの要件があり、これを整理すると概ね以下のようになります。
①相続人または親族(被相続人の配偶者、6親等以内の血族、3親等以内の姻族)であること。(従来の法律では被相続人の子の配偶者には寄与分が認められていませんでしたが、跡継ぎの嫁が息子に代わって親の介護をするといったケースは意外に多く、この問題を解消するため2019年7月に民法が改正され、相続人ではない親族にも寄与分が認められるようになりました。)
②被相続人の財産の維持または増加に貢献した行為を行ったこと。(貢献の内容が財産の維持または増加に関わらない限り寄与分とは認められません。)
③期待される以上に貢献した行為である「特別の寄与」を行ったこと。(夫婦、親子として多少身の回りの世話をした程度では特別の寄与とは認められません。)
④無償ないし無償に近い行為を行ったこと。(生活費や報酬等のお金をもらっている場合は寄与行為とは認められません。)
⑤継続性がある行為であること。(一定期間以上継続して貢献を行っていなければ寄与分とは認められません。)
以上の条件をクリヤーして寄与分が認められたとしても、例えば介護の場合の相場はヘルパーの時給相当額程度とも言われています。
本当に時間をかけて争うだけの価値があるのか、寄与した期間や内容を含めよく検討されることが必要と思われます。
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