遺産分割の手順(その10)
2025/07/09
遺産分割の手順(その10)
前回は“寄与分”について取り上げましたが、今回はもう一つの“特別受益”の問題について簡単に説明します。
特別受益とは、相続人の中に、生前被相続人から学費や生活費、婚姻費用や住宅の建築費等で特別に財産を付与されていた者がいる場合に、他の相続人との間に不公平が生じるため、これを是正するために設けられている制度です。
ただし、どこまでが特別受益に当たるのか、実際の裁判等では具体的な事例に即して判断されるため、その基準は非常に難しいと言わざるをえません。
実際に調停や裁判を通じて特別受益に当たるとされた場合には、持ち戻し計算(その特別受益分を相続財産に加えて相続財産全体を再計算し、相続人間の公平な相続分を算定する考え方)によって、各相続人への相続財産額を決めます。
例えば、被相続人が亡くなった時点での財産が2,500万円あったとします。相続人は子供3人でそれぞれ3分の1が法定相続分となりますが、被相続人が子の1人に500万円を生前贈与していた場合は、計算上この先渡しの500万円を相続財産に加えて(持ち戻して)3,000万円の財産があるものとして計算します。
従って、法定相続分で計算すると、実際には死亡時の2,500万円のうち生前贈与を受けていない2人はそれぞれ1,000万円、生前贈与を受けていた1人は500万円の遺産分割を受けることになります。
ただし、この持ち戻しについて、被相続人が特定の生前贈与等の額を遺産の価額に含めない旨の意思を表示していた場合(これを「持戻し免除の意思表示」といいます。)には、この意思表示に従って、生前贈与等の額の遺産への持ち戻しはしないということになります。
また、夫婦間では特別の規定があります。これは2019年7月1日施行の民法(相続法)改正によるもので、長年連れ添った夫婦間で居住用不動産の生前贈与等があった場合には、通常は配偶者の長年の貢献に報いるとともに、配偶者の老後の生活保障の趣旨でされた生前贈与等だろうと推測されるとの考え方を基に、婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合には、上記の持戻し免除の意思表示が明示的になされていなくても、これがあったものと推定する、つまり持ち戻し免除の意思があったものとして扱うこととされました。
これ以外にも配偶者の居住権を保護するための措置として、配偶者居住権や配偶者短期居住権といった制度が新設され2020年4月1日以降に発生した相続から適用されることになりました。
遺産分割について納得いかない、疑問に思うから相談したいと思われる方は、一度専門家に相談されることをお勧めします。その上で納得してから分割協議に進まれても決して遅くはありませんし、その方が納得いくスムーズな協議ができるのではないでしょうか。
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