相続財産を負動産にさせない対策(その6)
2025/08/19
相続財産を負動産にさせない対策(その6)
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈によって取得した土地を、一定の条件を満たせば国に引き渡すことができる制度で、2023年4月27日から施行されました。
制度の背景としては、利用価値の低い土地を相続しても、管理や固定資産税の負担が重く、売却も困難なケースが増加したこと。そのため放置された土地が「所有者不明土地」となり、公共事業などに支障をきたす事例が多発する事態になったこと。また、これまでも手続きとしてあった相続放棄では、他の資産も放棄する必要があり、不要な土地だけを手放す手段がなかったことなどから、こうした問題を解消するため、国が一定の条件を満たす土地を引き取る制度が創設されたものです。
この制度を利用できるのは、相続または遺贈によって土地を取得した法定相続人で、共有名義の場合は共有者全員の同意と申請が必要となります。なお、生前贈与や売買で取得した土地は対象外です。
また、前回のブログでも取り上げましたが、帰属ができない土地の要件があり、
◇建物がある土地
◇抵当権など債務の担保になっている土地
◇賃借権・地上権・地役権など他人が使用する権利がついている土地
◇有害物質による土壌が汚染されている土地
◇境界(所有権の範囲)が明らかでない土地
◇所有権や土地の範囲について争いがある土地
◇危険な崖がある土地(特別な管理が必要なもののみ)
◇管理の妨げになる工作物、車両、樹木などが地上にある土地
◇管理の妨げになるものが地下に埋まっている土地
◇土地を管理・処分するために、隣の土地の所有者等とのトラブルを解決しなければならない土地
◇そのほか、通常の管理・処分をするために追加の費用や労力がかかる土地
が列挙され、法務省のHP内“相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)”で詳しく解説されています。
手続にかかる費用としては、審査手数料として1筆当たり14,000円のほか承認を受けた場合は10年分の管理費用の額に相当する負担金の納付が必要で、負担金は土地の種類や面積、所在する地域に応じて変動がありますが、原則として1筆当たり20万円です。
このほか、更地で境界が明確であり、担保権や使用権が設定されていない公道に接している土地で、土壌汚染や埋設物がなく、管理に特段の費用もかからない土地という厳格な要件を満たすため、場合によっては解体費用や測量費用など、準備段階で大きな費用が発生することも想定されます。
様々な事情から、制度創設当初はハードルが高すぎるとその利用も低調でしたが、法務局でも相談体制を充実するなど制度の利用促進を図っていることから、徐々に申請件数も増えており、統計では令和7年6月末現在、申請総数4,001件(田・畑1,548件、宅地1,391件、山林620件、その他442件)を数えています。
この制度は、特に地方や山間部の「使い道のない土地」を手放す手段として注目されており、今後も利用件数は増加すると予想されます。
この制度の利用に関しては、全国の法務局・地方法務局の本局において事前相談を受け付けており、相談は事前予約制で一人1日1件(30分)ですが、2024年10月15日からは、これまでの対面又は電話による対応のほかWeb相談も開始されています。
相談対象は、土地の所有者本人だけでなく、家族や親族の方が相談することも可能です。
制度の利用を検討されている方は、申請に必要となる書類も多く、準備には時間と労力を要することとなるので、まずは法務局か専門家に事前相談することをお勧めします。
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行政書士谷村日出男総合事務所
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