行政書士谷村日出男総合事務所

相続手続き令和の法改正(No2)

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相続手続き令和の法改正(No2)

相続手続き令和の法改正(No2)

2025/09/20

2つ目の改正は、〝持戻し免除の意思表示の推定”で、2019年7月1日施行の相続法改正によって民法第903条第4項に新設されました。 持戻し免除の意思表示の推定とは、被相続人が明示的に意思表示をしていなくても、一定の条件を満たす場合には、持戻し免除の意思があったと法律上推定される制度です。 そもそも“持ち戻し”ってなんだ? と思われる方も多いのではないでしょうか? 持ち戻し(もちもどし)とは、相続における公平性を保つための制度で、特定の相続人が生前に被相続人から財産の贈与など(特別受益)を受けていた場合に、相続人間の公平を図るために、前もって取得していたその贈与分を一度相続財産の評価に戻して(相続財産に加えて)計算し、その分も合わせて遺産分割の基礎とする仕組みをいいます。 例えば故人がなくなる時点で3,000万円の相続財産を残しており、この数年前に一部の相続人に1,000万円を生前贈与していたとすると、その贈与が無ければ相続財産は4,000万円あったことになります。 相続人が3人で法定相続分が均等な場合、相続財産を3,000万円で評価すると1人の法定相続分は1,000万円ですが、先に贈与を受けていた1人だけ、実は2,000万円(他の相続人の倍額)を相続することになります。この不公平をなくすため先に貰った1,000万円を相続時に一度相続財産の3,000万円に加えて(持ち戻して)から、各相続人の相続分を計算しようというものです。 従来は、持戻し免除の意思表示が明確にされていない限り、生前贈与や遺贈は特別受益として持戻し計算の対象となっていましたが、長年連れ添った配偶者に対して居住用不動産を贈与する行為は、通常「老後の生活保障」や「感謝の意思」に基づくものであり、公平性を損なう特別扱いではないと考えられます。そのため、被相続人が明示的に「持ち戻し免除」と言わなくても、経験則に基づいて意思表示があったとみなすのがこの“持戻し免除の意思表示の推定”に係る規定の趣旨です。 推定を受けるためには3つの要件があり、その要件は次のとおりです。 ① 婚姻期間が20年以上の夫婦であること。 ② 贈与・遺贈の対象は、居住用建物またはその敷地(全部または一部)であること。 ③ 贈与・遺贈の方法は、生前贈与または遺言による遺贈であること。 これらの要件を全て満たすことにより、持ち戻し免除の意思表示があったと推定されます。 つまり前述のように贈与・遺贈された財産は持戻し計算の対象外となり、受贈者の相続分が減らされることはありません。  このような推定規定が導入されたことで、例えば生前に長年連れ添った配偶者に自宅を贈与したり、遺言書で遺贈する(無償で与える)としたとしても、相続財産への持ち戻しが免除され、遺産分割ために自宅を換価処分して手放すような事態も避けられることになります。  ただし、実務上の対応としては、推定規定に該当する場合でも後々の争いを防ぐため遺言書に明示的に持戻し免除の意思表示を記載(明示)しておくことをお勧めします。 遺言書の記載内容は非常に大切で、明確にするためにも専門家への相談をお勧めします。

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