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相続手続き令和の法改正(No5)

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相続手続き令和の法改正(No5)

相続手続き令和の法改正(No5)

2025/10/13

相続手続き令和の法改正(No5)
五つ目の改正は、“遺産分割前の遺産の処分”です。「民法906条の2」は改正民法により新設された重要な規定で、遺産分割前に遺産が処分された場合の取り扱いについて定めたものです。

この制度もこれまで紹介した他の改正法と同じく2019年7月1日に施行されました。
内容は、

〇遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合でも、共同相続人全員の同意があれば、その財産を「遺産として存在するもの」とみなして分割できる。

〇処分した相続人の同意は不要で、他の相続人全員の同意があれば適用可能。

というものです。
この規定が新設された背景として、かねてより、相続開始後の遺産分割が成立するまでの間に、相続人の一部が遺産を勝手に処分するケースが問題視されていました。

こうした処分が行われることで、処分した相続人が利益を得て、さらに残りの遺産も分けると「二重取り」になり、他の相続人との公平を欠く事態が生じます。この不公平を是正するために、処分された財産も遺産として扱えるこのような制度が導入されたものです。
対象となる処分は、相続人が行った処分だけでなく、相続人以外の者(例えば相続人の配偶者)が処分した場合も含まれ、処分された財産は、実際には存在しなくても「みなし遺産」として扱われるため、計算上遺産に含めて分割できます。
例えば、相続人の1人が遺産の不動産を1,000万円で売却した場合、遺産分割ではその1人が既に1,000万円分を取得済みとみなされ、残りの遺産からの取り分が調整されます。
処分された遺産は、不動産のみならず、預貯金や動産など故人名義の遺産は当然として、そうでなくても実質的に故人の財産と認められるものは全て含まれます。
実務上よくあるのは、いわゆる「名義預金」で、故人が妻名義で預けていた預貯金(妻の名義を借りて口座を開設していた預貯金)も遺産に含まれます。たとえ妻名義の預金だからといって、実質的には故人が預け入れたものであれば、故人の遺産と解釈することが可能になり、相続開始後、これを勝手に処分した場合、本条の適用があることになります。
また、処分者以外の相続人全員の同意については、一度同意すれば原則として撤回することはできません。
あらためて申し上げるまでもなく、相続開始後、遺産は相続人の共有状態となることから、遺産分割前にこの共有財産を処分(売却・譲渡・賃貸など)するには、原則「共同相続人全員の同意」が必要です。誤った対応をしないためにも事前に専門家等に相談されることをお勧めします。
 

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