令和の相続法改正(遺贈の担保責任)
2025/11/16
相続手続き令和の法改正(No7)
七つ目は、民法(債権法)改正による遺贈の担保責任の見直しです。
遺贈の担保責任は、2020年4月1日施行の民法改正(債権法改正)により大きく見直され、従来の「不特定物に限る担保責任」から、特定物・不特定物を問わず、相続開始時の状態での引渡義務へと一本化されたのが特徴です。その根拠条文は改正民法998条です。
改正前の条文では、遺贈義務者の担保責任に関して
◆不特定物を遺贈の目的とした場合において、受遺者がこれにつき第三者から追奪を受けたときは、遺贈義務者は、これに対して、売主と同じく、担保の責任を負う。
◆不特定物を遺贈の目的とした場合において、物に瑕疵があったときは、遺贈義務者は、瑕疵のない物をもってこれに代えなければならない。
とされ、特定物遺贈には担保責任が明文化されておらず、実務上の扱いが不明確でした。
ここで、特定物債権と不特定物債権について簡単に触れておきますが、特定物債権は「これじゃないとダメな物」、不特定物債権は「種類が合えば何でもいい物」を目的とする債権です。例えば自動車で説明すると、特定物債権は「この中古の〇〇の車」というように個体が一つのものに特定されているもの、不特定物債権は「〇〇の新車1台」など、型番やグレードは指定されているものの個体は未特定ということを指します。
これに対して改正後の民法998条は、
◇遺贈義務者は、遺贈の目的である物又は権利を、相続開始の時の状態で引き渡し、又は移転する義務を負う。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うとされました。
つまり、対象を特定物・不特定物を問わず全ての遺贈とし、別段の意思(例えば、遺言書に「修理して渡す」「抵当権を抹消して渡す」など)があればそれに従うが、そうでなければ第三者の権利(例えば抵当権)が付いていても、そのままの状態で引き渡せば足りることとされました。
具体例で説明すると、遺言で「甲に○○の土地を遺贈する」と記載したとします。その土地に抵当権が設定されていた場合でも、遺贈義務者(渡す側)は抵当権を抹消する義務はなく、そのままの状態で引き渡せば足りることになります。
従って、実務上の注意点としては、遺言書に「修理して渡す」「抵当権を抹消して渡す」などの別段の意思表示があるかを必ず確認することが必要です。それによって、受遺者(受ける側)が不利益を被る場合は、遺贈放棄や遺言無効主張の検討をすることも必要となります。
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